講談社文庫、百田尚樹「影法師」と、都立浮間公園の邯鄲と、一石の尺度
講談社文庫、百田尚樹「影法師」を読んでいます。
長年の放送作家である百田尚樹氏の文章は、非常に読みやすく書かれています。
茅島藩の下士の家に生まれ、筆頭家老まで上り詰めた名倉彰蔵 ( 戸田勘一 ) が、竹馬の友 頭脳明晰で剣の達人、磯貝彦四郎の不遇の死の真相を探る物語です。
江戸家老を務めていた彰蔵が、国元に筆頭家老として戻った屋敷、濡れ縁の軒下に吊るした虫籠に入っていた邯鄲(かんたん) は、・・・と読み進めてきて、
邯鄲は私も大好きな小さな秋の虫です。るるるると美しい音色で鳴きます。
小学生の頃です。都立浮間公園が、今のように整備される以前は、うっそうと茂った草むらの中に邯鄲がたくさんいました。
浮間ケ池に釣りに来ていて、手元にあった大きなバケツに入れても、すぐに飛び出して逃げてしまうのですが、わずかに残った邯鄲を虫籠に入れて、虫の音を楽しみました。30年も前の浮間ケ池には、小鮒、タナゴ、クチボソもいました。
戸田勘一が郡奉行付与力の下役になり田の管理と年貢の取り立てのくだりで・・・、
武士の禄高は米の収穫量・石高で表わされています。一石は一反で出来る米、一反は三百歩、つまり三百坪で、一坪は人が一日に食べる米が穫れる土地の大きさになります。ほぼ一年にあたる三百六十日分の米が穫れる土地を一反とした。坪とか反とかいうのは、実はすべて米作りから出来た尺度ということです。勉強になりました。
また、話が本題から大きく外れてしまいました。
読み終えて清清しい気持ちになれました。表題の影法師とは誰のことか、人のために一命を落とす覚悟があるのか。自分の一生を後悔することなく行き抜く。
主人公を影で支える人がいる設定は 「海賊とよばれた男」と、同じようですが、それぞれに趣がありました。
今年のベスト本の一冊です。この本に巡り会えたことは幸運でした。
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